『ONE OUTS』 甲斐谷忍

ONE OUTS 1 (ヤングジャンプコミックス)

ONE OUTS 1 (ヤングジャンプコミックス)

 今ヤンジャンで『LIAR GAME』という『カイジ』のような駆け引きマンガを描いている甲斐谷忍による野球マンガ。なんだけど『カイジ』風の作品を描く作者による野球マンガが普通の野球マンガなわけがなくて、それは主人公であり、ピッチャーであるトーアが変化球を投げることができない(そしてにもかかわらず成績を残す)っていう一点を取っても明らかだと言える。一般的に野球マンガに要請される「いい話」、「成長」みたいな要素も持ちながら、甲斐谷色が色濃く出ている野球の脱構築的(ずっと我慢してたけど言っちゃった!)側面が最高に面白い。雨によって試合が流れるのを狙って時間を稼がなくてはならないチームと、試合が流れるのを阻止するために試合を早く進行させたいチームが両チームとも野球のルールを逆手にとって守備陣はいわば敵にいかに点を献上するか、攻撃陣は如何にアウトになって攻撃を終了するかを競い合うという滑稽な場面が描かれる。ただこの反転した価値体系すらも単純に維持されるわけではなく、トーアという1人のプレイヤーによって撹乱されることになる。久しぶりにマンガ喫茶でナイトパックを使ってまで読んだマンガだった。