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『バビロンを夢見て―私立探偵小説1942年 (新潮・現代世界の文学)』 R・ブローティガン
現実逃避を最高に洗練された形で行うことが出来る主体であっても、現実が持つ重力に引っ張られてしまうこの不思議。私立探偵C・カードは現実では最底辺を生きているが、妄想世界バビロンではあらゆるパターンの成功をおさめている。いや、バビロンという妄想世界が生まれたためにカードは現実世界において地べたを這いずるはめになったとも言えるんだけど。さて、そんなカードに成功を掴むチャンスがやってくる。それによってバビロンと現実が僅かに接近しそうにはなるんだけど、現実がバビロン化してしまってはバビロンがバビロンである意味を失ってしまうからか、最後の最後でカードはチャンスを手にすることができない。妄想世界バビロンの防衛機制。とかなんとか綺麗に纏めてはみたけど、小説内でカードに仕事を依頼する人間が一体何を求めていたのかはさっぱりわからない。
ヤフオクに出そうかとも思ったけどマキちゃんにプレゼントするわ。
- 作者: 多和田葉子,室井光広
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/04/09
- メディア: 文庫
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他、丸谷才一『年の残り』、石川淳『紫苑物語』(新潮文庫)などを読んだ。『紫苑物語』の中の「鷹」という話がすごく面白かった。レッドパージだとかなんだとか昭和な匂いが濃い現実的な話かと思いきや、煙草密造集団が作る死ぬほど美味しいピースだとか、「明日語文法」と「明日語辞書」なる謎めいた2冊の本とその明日後によって読み解くことができる明日のニュースが掲載されている新聞なんかが出てくる、少し安部公房な感じがする幻想小説であり、今日に対して明日が企む革命小説でもある。今日と明日の境で変わる煙草の味。あとがきによると「虹」ってのと「落花」ってのもこういう感じの幻想的革命小説らしいので読んでみたい。