『奇想の系譜』 辻惟雄

奇想の系譜 (ちくま学芸文庫)

奇想の系譜 (ちくま学芸文庫)

 本当に面白い本だった、久しぶりに誰にでもオススメできる。岩佐又兵衛狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢蘆雪、歌川国芳と言った、日本画のアカデミックな世界では受け入れられてこなかった異端児達を、再評価した本。異端児として再評価したわけではなく、そ日本画本流とされてきたものに対する前衛として評価したところにこの本の学術的な価値があるんだろう。
 けどそんなことは、美術畑の人間ではない僕にはある程度どうでも良いことで、収録されている図版の多さにより実際に絵を見ることができる面白さと、その絵に対するなんといったらいいか…30年以上前に書かれた本とは思えない瑞々しい解説(火星人がどうとか、単語レベルで感じさせる時代性はご愛嬌)!たとえば鶏を描くにしても描かれるべき「鶏の手本」があったところから、放し飼いにされた鶏を描いたというのは、単純なことだけどものすごくアヴァンギャルドだ、書かれるべき「日本画の歴史」があったところに、埋もれてはいたけど呼吸をしていた画家たちにスポットライトを当てたのと同じくらいに、ね。クスっと笑えるような絵から本当におぞましい絵まで、現代人のセンスにあっているように思えるし、だからこそここでとりあげられた画家達が今では人気になっているのかな。だけど、筆者はそういった単純なもてはやし方にはあとがきで微妙な態度を取っていた。
 
日本美術の発見者たち

日本美術の発見者たち

 これも面白そう。