あさりど、With T

 「日常における不気味なもの+『ワラッテイトモ、』無修正版上映」に行ってきた。「ワラッテイイトモ、」ていうのはある週の月曜日から金曜日までの「笑っていいとも!」を5つの章からなる45分強のムービーにリミックスしたもの。解説で五十嵐さんも言ってたけど、タモリ論のようなものとしても十分面白い。よく考えたらあんな真昼間にダンスしながら出てくるサングラスをかけた怪しい中年に対する違和感や由来を気にしないということが相当異様なことである気もする。
 このリミックスは「いいとも!」の瞬間瞬間の過剰な反復が手法上の大きな特徴してあげられるけど、そこで反復されるのは「いいとも!」の異様な側面だ。そもそも「ワラッテイイトモ、」で作者のK.K.が指摘していたように、「笑っていいとも!」自体が異様な反復によって成立している(タモリがゲストに言う「太った?」という言葉)。細部の反復によって、「いいとも!」の反復の不気味さが浮き上がってくるのは本当に嫌な体験だった。
 またタモリの声をサンプリングして、作者K.K.とタモリの会話が捏造されるんだけど、これはテレビというメディアに対する反抗なんかね。反抗とは言っても、このようなムービーを作って誰かに見せようとするなら普通は散発的なゲリラ戦のような展開しかできない。しかし、このムービーは十分大規模にその反抗的な試みを達成しているように思える。「キリンアワード2003」で審査員特別賞を受賞し、こうやって相当数の人がこの作品を認知するようになっているからだ。
 タモリマッカーサーに重ね合わせてみたり、テレビというメディアに対する反抗だったり、ある程度大きな論点も含んでいるしどの問題提起も観客の中である程度作者の意図通りに処理されているんだろうけど、やはり「笑っていいとも!」→「ワラッテイイトモ、」というリミックスによって「日常における不気味なもの」を浮き彫りにしたのが最も重要な成功なのかなと思う。「イイトモ、」によってなされる部分の反復も、そして「ウキウキWatching」の歌詞が公然と言ってのけるように僕らの日常にいつもいつも「時間どおりに Come with me」してくる「いいとも!」全体の反復も、まるで悪夢のようだ。9.11のテロによって「いいとも!」の反復が粉砕されたかに見えたのもつかの間、次の瞬間にはそっけなくテロの被害者の冥福を祈り、またしてもあのくだらないゲームの反復をはじめる「いいとも!」の姿が映し出される。「いいとも!」の、そして日常の強度。

 五十嵐さんがこのような「日常における不気味なもの」(今更だけど不気味なものというのはフロイトの概念)を暴露したものとして他にあげていたのが

Sink 1 (バンブー・コミックス)

Sink 1 (バンブー・コミックス)

で、僕も早速買って読んでみたんだけど、自分の部屋に対する恐怖心が止まらなくなって、結局その日は怖くてシャワーを浴びられなかった…。さらに僕は知らなかったんだけどGordon Matta-Clarkという人もそういった人の例として挙げられていたんだけど、僕はこの人のことを知らなかった。調べてみたら反建築家?といった感じで紹介されていて、興味を持った。
Gordon Matta-Clark

Gordon Matta-Clark

Phaidonのと、
Object to Be Destroyed: The Work of Gordon Matta-Clark

Object to Be Destroyed: The Work of Gordon Matta-Clark

研究書らしいもの、合わせて15000円くらいかー。

 さらに五十嵐太郎さんと山形浩生さんの対談