微声拳銃

 西島大介ディエンビエンフー」(「comic新現実―大塚英志プロデュース (Vol.2) (単行本コミックス)」)を立ち読みする。可愛いキャラクターをその残酷さのギャップが特徴的。記号的なキャラクター。ベトナム戦争のマンガだって聞いてたんだけど、ディエンビエンフーの戦いってインドシナ戦争が終わるきっかけとかだった気がする(世界史は微塵もやってないのではっきりとはわかんないんだけど)、登場人物もアン、ドゥ、トロワとか言ってるし。まあ「ディエンビエンフー」はベトナムが南北に分離するきっかけといっていいはずだからそういう含みがあるのかも。
 まあそれおいておいて、最初にも書いたように西島大介の絵にかかればどんなものも本当に記号みたい。リアリティーがあるのかないのか、その真ん中でぶらんぶらんしているようなマンガ。手塚治虫のマンガを読んでる感じに近い。ただ、手塚作品の主人公はマジメなので、そのマジメさがない分西島作品の方がもっともっと記号化が先鋭化してる。冒頭の主人公のカメラマンとヒロイン候補の戦争という劇に対する反応の対比から、ヒロイン候補がカメラマンにナイフを投げつけるところまでほのぼのした絵で緊張感を出しているのはなかなか。ナイフがカメラに当たって命が助かるというお約束もいい、銃弾が十字架のペンダントに…(恋人がくれたお守りに…、胸に入れてたジッポーに…)ってのはいつになってもイカすぜ!面白そうなキャラクターも多いし(決して魅力的ではない)、続きが楽しみ。
 

チワワちゃん (単行本コミックス)

チワワちゃん (単行本コミックス)

 あとこれを古本屋で買って読む。表題作の「チワワちゃん」って、ものすごく大学生的(なんというか、うまく言えないけど、僕みたいなインターネットキッズの大学生ではなくて、都会的な大学生。偏見を承知で言えば僕の中では青学の人とかがこんな感じです!)。バラバラ殺人の被害者になっちゃったチワワちゃんという女の子についての断片的な話を皆が持ち寄るという感じ(インタビューのような形式、『犬狼伝説』の「野良犬 -マッハ軒立喰師撲殺事件異聞-」に近い…んだけど読者層が重なるとも思えないなあ)。しかし、そんなもので(当然のことながら)チワワちゃんを再構成するのは不可能だ。インタビューの最後の高円寺でひろったクマちゃんの話はこの皆のインタビューの中ですごく特権的な位置を占めていると思う。結局彼らのサークルの外でチワワちゃんは元気でやっていたことがわかるから。書き方も面白いし、最後の「ただ あたし達は そうしなきゃいけなかったんだ」っていうのは、刹那的な繋がりに対しての希望みたいですごく好き。本名も知らない人間に対して、そういう感情がおこるっていうのは、少し素敵なことだと思う。