『むこうぶち』は11巻も本誌の分もすごく面白い。江崎くんが死ぬほど強くなって帰ってきた!しかも「チィ!」をまたやってるあたりがポイント高い。もう最終戦の面子は見えてきたなあ。江崎、水原、御無礼、まああとは安永かね。片山まさゆきのマンガは打ち回し自体に悪影響を及ぼすけど、『むこうぶち』は安目見逃しとかをさせる影響力がある。決まった時はかっこいいけど5回に4回は後悔する。「御無礼、飛びましたね?」とか「御無礼、ラスですね」とかは正直一度言ってみたい。
 冬目景の短編集『僕らの変拍子』は『イエスタデイを歌って』しか読んでない僕の冬目景観を少し変えた。恋愛バトル云々よりもコンビニを中心に展開されるダメフリーター(ダメ大学生も)空気を表現するのがうまい人だと思ってたからロボット教師の話みたいなギャグっぽいものを書いても雰囲気出せるんだなあって思った。まあ予備校の話とか、自転車のホイールの話とか、ダメな人間を描く上手さも見せてくれるし、ヴァリエーションに跳んだ面白い短編集。最初の短編が自分を押さえ込んでる高校生とドラッグの話で、最後の方にフリーターと自転車の話が来るのは意図したものかどうかは別としてすごく面白い。予備校の話が真中に入ってるのも、またなんとも。人が単純に成長していくんじゃなくて燻り続けるっていうどこにでもある話を描く上手さが強調されてるよ。社会人/フリーターってのは正確に対比できるわけじゃないけど木尾士目『五年生』とも通ずる対立軸だね。