『パラノイア創造史』 荒俣宏 ちくま文庫

パラノイア創造史』 荒俣宏 ちくま文庫
 荒俣先生の博学ぶり、というか物好きぶりには本当に頭が下がる。奇書とか珍しい本とかにすごくたくさん目を通してる、前に聞いた「珍しい本を買って書いた本の印税でまた本を買う」ってのは本当なんだろうなあ。「読みたくても読めない本読書マップ」の様相を呈してる。この本自体も、荒俣先生自体の発想がすごいってわけじゃなくて、色んな文献なり本なりから「パラノイア」って観点で集めた事例を紹介してるだけとも言えるんだけど、その集め方のセンスが荒俣にしかできないと思わせる。ボルヘスは記憶の全てをフネスに託し、殺してしまうことで自らの不眠症を解消したわけだけど、現実に「記憶の人」がいて、そういう人の生き様を紹介してくれるなんて!「記憶の人シィー」は一度覚えたことを忘れられないんだけど、その記憶の覚え方が語呂合わせとか使ってたのがなんだか笑えた。受験のときに年表覚えるときに使ったなあ。あと、共感覚者が詩を味わえないっていうのはいわれてみればその通りか(まさに、その通りだ)。それどころか色とか音とかに関わる全ての比喩表現を理解できない。彼らの側からすれば確信に満ちたノンをそれらの表現に突きつけることができるわけで、理解できていないのは僕たちの方なんだろうけど。