実に

 正月からマンガ喫茶に入り浸っていた、そこで勝手に広がっていた連想なんかを書き付けておこうと思う。

 『シガテラ』が世界の嫌な部分を可能性として描いていたとしたら、花沢健吾ボーイズ・オン・ザ・ラン』は5巻までで世界の嫌な部分を現実として描き出している。『シガテラ』を読んで僕はその可能性を見つめ恐怖するが、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』を読んで現実(あるいは現実っぽさ、とでも言うべきなのか)を思い出さされた僕は、本当にとても嫌な気分になる。こんな話はそこら辺に転がっているし、もしかしたら自分も当事者のポジションにいるのかもしれない。

 相田裕GUNSLINGER GIRL』はイタリアを舞台として主に治安当局と過激派の闘いを描いたマンガである。政府は「社会福祉公社」という公益法人を隠れ蓑としてダーティーな工作活動を行っている。公社では身体障害を持つ子供(現在のところ全て少女)への薬物投与による「条件付け」や、身体能力の強化のための義体化が行われ、彼女らを優秀な工作員として育てている。彼女らは「条件付け」によって「担当官」と呼称されるパートナーへの絶対服従を刷り込まれている。彼女らは担当官と2人1組になって行動し、そのペアは「フラテッロ=兄妹」と呼ばれている。彼女らに対する接し方は担当官毎に差異が見られ、厳しい態度を見せる者もいれば恋人のように振舞う者もいるし、また距離の取り方に悩む者もいる。
 投薬と義体化に伴って彼女らの寿命は極端に短くなっている、という設定があるものの、その強力な活動を見ればほとんど不死のような印象を受けてしまう。しかしながら記憶の錯乱を起こし最終的には脳死してしまうアンジェリカによって彼女らが死ぬ存在であること、というよりは死に近い存在であることを改めて認識することになる。
 で、このシーンで思い出したのが『F.S.S.』でインタシティが死ぬシーンだったというだけ。当然騎士とファティマの関係を念頭にガンスリも読んでいたけど(ジャンはフィルモアっぽいなあとか)、ファティマも彼女らもそういや死ぬんだったなと。500年弱生きたインタシティと数年で死んだアンジェリカを比較するのも変だけどさ。えっと、そんだけ。