職場

 神戸映画資料館に「70年代の釜ヶ崎《三本立て》」特集を観に行く。

  • 1.「釜ヶ崎解放」(日本/34分/16mm)
  • 2.「1973〜1974 釜ヶ崎越冬闘争 冬の陣」(日本/23分/16mm)
  • 3.「暴力手配師追放 釜共斗の戦い」(日本/38分/16mm)

 釜ヶ崎というのは東京でいうと山谷みたいなところで、まあ要するにドヤ街。僕の会社のお取引先のうちいくつかはこの周辺にあって、たまに釜ヶ崎の方に来ることもあるけど、スーツを着てるだけで浮いてしまうようなところ。まあ詳しくはこちら
 1本目と2本目はヴァリエーション違いと言った感じでほとんど大差ない。仲間から死者を出すな、を合言葉に仕事もなく厳しい冬を乗り切ろうとする闘いの様相が撮られている。言葉では伝えづらいんだけど、本当に普通の日雇い労働者が集まってデモなんかしてる映像は何だか少し変な感じがする。越冬闘争において野戦病院が設置されていたり、演説や炊き出しが行われる広場のような所には「人民が天下をとった国 中国・朝鮮の本を読もう」なんてライブラリーが置かれている。そして、その横でおっちゃんが炊き出しを食べながら新聞(イメージ的にはスポニチ)を読んでたり、あとは「アイヌ共和国独立万歳!」と言った落書きと並列して書かれる「ポリ公殺すぞ」の文字とか。自分たちが建てた大阪市の施設にとデモをかけ、自分たちが建てた建物に入れずにその前で「仕事をもってこい!」と声を上げるという少し喜劇的だけど生死に関わる運動。それでも労働者の顔はどこか少し、頼りない、運動から阻害されているような気がした。「くすぶっているだけではダメなんです!」と声を荒げるリーダー風の男/座って炊き出しを食べながら新聞を読む労働者、という映像が意図してか意図せずか映し出されていたのが印象に残っているからだろうか。日焼けした顔や汚れた服によってフィルムを通じて煤けたようなイメージを受ける映像だったけど、その中で、餅つきの臼の中の餅の白さや人民パトロール隊が救出した病人に飲ませる牛乳の白さがとても映えていた。その白さと特徴ある労働者の顔が1週間たった今でも記憶に残っている。
 3本目の「暴力手配師追放 釜共斗の戦い」では、空手が武器を持った軍・警察に素手で対抗するための武器であることが神話的に語られ、暴力手配師のバックにはヤクザ、そのバックには西成警察そしてそのバックには警視庁…という陰謀論的な構図とベトナム戦争ベトナム労働者が帝国主義を打倒したという歴史観が示される。空手と西成警察についてはともかく、警視庁と帝国主義のことなんてきっと労働者にとってはどうでもいいはずで、何よりもまず要求されているのは正常な労働環境だ。マクロな視点が放棄されなければならない地点というのはきっとあるはずで、そして釜ヶ崎はそういうところだと思う。アイヌ共和国、人民の国中国・朝鮮、警視庁、帝国主義…よりも、まず仕事があって暴力手配師が追放されればそれでいい。西成警察署員も警視総監もきっと「ポリ公」であることには変わりないんだろうけどね。

 他にも神戸映画資料館では先月にアンセルモ・デュアルテ『サンタバルバラの誓い』も観た。2つの法が入り組んでしまったことによる喜劇。

 あとプロフィールでバトンやってみました。