ネタバレを含む

リリイ・シュシュのすべて 通常版 [DVD]

リリイ・シュシュのすべて 通常版 [DVD]

 今更だけど『リリイ・シュシュのすべて』を見た。岩井俊二作品はこれで2作目、共通して感じたのは可愛くない女の子/女性をエロチックに魅せるのがうまいなあということ。沖縄旅行でのアシスタントも、蒼井優(可愛くないとかいうと怒られそう)も、伊藤歩も、基本的には普通の女の子/女性なのにある角度から見たときに恐ろしく綺麗に見えたり、エロチックで、そういうカットを見せてくるのがすごい。街を歩いていて、普通の女の子/女性がふとあんな風に見えてしまったらドキドキしちゃうだろうなあ。
 決定的なターニングポイントとなっているのは、星野が札束を奪うシーンであることは間違いない。あの「札束」は沖縄旅行において時限爆弾としての役割を果たしている。沖縄旅行中盤以降に見られるあの持続する緊張感は、それ以降も合唱の舞台上における視線の交錯や、久野が倉庫に吸い込まれていくシーンなどにも見られて、見るものの神経を磨り減らす。そのような潜在的な危険性が顕在化するシーンにおいても、抑制は保たれており、明らかに首吊りを暗示させるカットを含んだ一連のラストシーンをアンチ・クライマックスとする全体的に端整な映画だった。そのような見掛けの端整さと、実際に観者に与える影響の落差が見事。星野が叫び狂うシーンにおいても、いやそれどころかあらゆる死のシーンにおいてすら、カタルシスが与えられることはない、しかし僕らは確実にダメージを受けている。

 こういう風に感想を書いてみると、『シガテラ』にすごく似ているなあと思った。潜在的な恐怖とクライマックスの無さが。