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Points of View - 視線の変遷 - 野又穫作品集

Points of View - 視線の変遷 - 野又穫作品集

 最近の作品になると建築物というより構造物のような感じになってきてるけど、建築物と構造物のバランスが取れている作品が僕はとても好きだ。「幻想的」の一言で済ますのもなんだから、どうしてそのような印象を与えるのか考えてみたんだけど、この人の描く空想建築はどれも無人の荒野のような所(この単語が連想させる土地の空気を持った空間ってことです、汲み取っていただきたい)に打ち捨てらているようで、建築物としての現実性が欠けているにもかかわらず何故か階段だけは大きな存在感を持って描かれている。一体誰がこの建物を登るというのか。無人の空間に配置された純粋に登ることだけを目的とした建築、そんなものはゲームの中にしか存在しない。僕はこの人の描く物を見ているとき、自分を勇者に重ね合わせて幻想性を感じているのだと思う(えー!)。

その他、『ファミレス以外!―石原まこちん短編集 (FTCシリーズ (15))』(「La 4名様」っていうタイトル以外は全てがつまらない、がっかり)、『進歩とカタストロフィ―モダニズム 夢の百年』(ゲットー内で書かれた日記の話が興味深かったのと、サンテリアマリネッティの微妙な関係について勉強になった)、『現代思想冒険者たちSelect 鏡像段階 ラカン』(はじめてラカン理論が腑に落ちた)、『月蝕機関説 (河出文庫―寺山修司コレクション)』(ジェラルド・ティテュ=カルメ『ポケットサイズの棺桶』について、死は「ことば」でしかない)、『音楽 (新潮文庫 (み-3-17))』(精神科医が自分の分析に自己満足しているうちに勝手に解決、って感じ)、『きみはペット(1) (KC KISS)』(ペットがペット以上のものになるという有り触れた展開にげんなり)、『幽霊たち (新潮文庫)』(燃えつきた地図』を連想した、これについてはまた後ほど)、『働きマン(2) (モーニング KC)』(社会における人間関係を描いた漫画として素晴らしい)、『ジェリーインザメリィゴーラウンド (1) (宝島社文庫―Comics)』(もう忘れた)、『野生の思考』(ついに読み終えた…!命名の所がとても面白かった)、『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)』(いまさら…これも後ほど書きたい、予想外に面白かった)。

世界によってみられた夢 (ちくま文庫)

世界によってみられた夢 (ちくま文庫)

 まさに「美しい本」。針金その他で構築されたオブジェはあまりに脆そうで、かつ柔らかい。もはやあざとさまで感じてしまうほどに、繊細で美しい。僕は元気な女の子も好きだけど、一度は壊れそうなほど脆い女の子の支えになってあげたい、とも思っています(えー!)。