『嗤う日本の「ナショナリズム」』 北田暁大、『現実の向こう』 大澤真幸、他1冊

 北田暁大嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)』は思いのほかに痛い本だった。痛いというのは、自分のしている繋がり方がこうもまあ型通りなものなのか、と思い知らされたという意味で。大澤真幸現実の向こう』はアメリカとオウム真理教を「他者への不寛容」というキーワードでくくっている。日本の将来のあり方や、オウム真理教(アレフ)は如何に地域住民と融和をすべきかなどの具体的な(本当に具体的な)方向が示されている。もちろんそれぞれ具体的であるからには示される方法は異なってはいるが通底するところは誰の目にも明らかで、それを意識しながら読めばわかりやすい、性急過ぎる提言だっていうのはわからなくはないけど、性急すぎるというだけで何も言わないよりは何かを言うことはとても大事だよ、慎重に慎重にと黙っていてもしょうがないと思うんだけどな。あと今村仁司抗争する人間(ホモ・ポレミクス) (講談社選書メチエ)』も読んだけど、承認し優越したいという欲望があるから暴力が生まれるし、だからこそ「抗争する人間」になるっていうのはわかるしその歴史を辿るのも面白いのに、結局は他人に対する欲望を消し去る「覚醒倫理」がどうたらとか言っちゃってそれによって暴力的ではない世界が…くるの…?みたいになってしまってる。まあ「覚醒倫理」についてはこれから語られるのだろうけどこの本単体で見るとそんなオチですかという印象は否めない。