『山口晃作品集』 山口晃、『蹴鞠』

山口晃作品集

山口晃作品集

 自衛隊が太平洋戦争時代にタイムスリップする『ジパング』も、同じく自衛隊が戦国時代にタイムスリップする『戦国自衛隊』も、僕は結構好きで、それはそのストーリー面の面白さもさることながら、現代的なものと時代的なものの融合という絵的な面白さがあるからだ。
 そんな僕がこの作品集を気に入らないわけがない。一見普通の大和絵で、教科書なんかでよく見る合戦絵巻(ていうのか)なんだけど、よく見るとスーツ姿のサラリーマンが接待されてたり、巨大兵器が暴れていたり、馬かと思えばオートバイだったりとものすごく緻密な絵で、細かい洒落が挿入されている。東京や大阪、六本木なんかの鳥瞰図も大和絵の手法で描かれていて、それもまた嫌というほど細かく描きこまれているので、付属のルーペを手に覗き込むように見ている。現代と過去の単純なハイブリッドなのではなくて、現代と過去が手法の次元まで含まれてハイブリッド化されているのがすごく新しい。それぞれの作品には作者のコメントがついているのだけど、どれもとぼけた感じなのもまたいい味を出してるなあ。戦国時代の馬にも、朝顔にも、また門前道にも機械的なギミックを描きこんでいるのが特徴の1つだと思うけど、この人は多分、小学校とか中学校の授業中にもずーっとこういう感じの絵を描いていたんだろうなあという気がしてしょうがない。こんなの楽しんでじゃなかったら描けないと思う。発想に見合う画力があるとこんなに楽しいものができあがるんだ、といういい例。

『蹴鞠 -改訂版-』
 下鴨神社というところに初詣に行って来た。そこの物販コーナーがなかなか面白くて、とりあえず一番目を引いたのが「八咫烏Tシャツ」なるもの。胸元に八咫烏のワンポイントが光る!このTシャツさえ着ていればこの八咫烏がきっとどこにだって導いてくれるはずだと思った。色々な事情(主にデザインと値段)で買うには至らなかったけど、いつかお金持ちになってこういうものを洒落ですぐ買えるようになりたいなと思う。そう考えればお金持ちを目指すのも悪くは無いな。結局代わりに蹴鞠のガイドブックのようなものを買った。まあ軽く読み流しただけなんだけど蹴鞠が上手だった天皇を「御名足」なんて言ってて、蹴鞠業界特有の言い回しが少し面白かった。あと、蹴鞠には勝ち負けがないということを知る。アメリカはオフサイドを嫌って、得点がバンバン入る形式を好み、ヨーロッパはオフサイドルールを採用していて、得点の瞬間のカタルシスを得るためにその瞬間を遅らせようとする(とか大澤真幸が言っていた気がするんだけど)、日本は得点云々自体が存在しないんだなあ、「勝敗の興味が全く無い蹴鞠」だからね。スポーツと芸術の混合なんだな。一度名人の蹴鞠を見たみたいと思う。
 みくじは中吉。「交際 まじめにつきあいましよう―今のままではよい友は得られない 《ほれた病に薬なし》」というのに爆笑。原文でもボールドだった。