『モザイク』 田口ランディ

 よくわかんないけど、すごくでかい話を書く作家として田口ランディをあげたいと思う。僕は『コンセント』しか読んだことなかったのだけど、先日ブックオフの100円コーナーで見かけた『モザイク』を出来心で買ってしまった。田口ランディと聞くだけで拒否反応を起こす人もいて、あんなの読んでる=DQNみたいなイメージが(少なくとも僕のまわりの一部)にはあって、それもなんとなく理解できる(僕もそういうイメージだった)。けど、実際読んでみると結構よくわかんない魅力があって、びっくりした。
 『モザイク』は、移送屋という職業についている佐藤ミミという女性を中心にしたお話。移送屋というのは、精神的に障害があると思われる人間を、自発的に医者まで向かわせるというお仕事。そして、その仕事中、正也という少年が脱走する。彼は「渋谷の底が抜ける」という言葉を残していった。
 全体的には救世主救済委員会だとか、電磁波(オカルト的な意味で使われる)を浴びるとどうこうだとか、電子レンジ化するだとか、特殊な概念がちりばめられているオカルト小説なんだけど、結局よくわからない覚醒があって、佐藤ミミは正也くんと世界に対する理解を共有する。結局、よくわからない魅力があるっていうのは本当に、よくわからないことによって生じるんだよなと思った。たしか『コンセント』のときも、いきなり覚醒していた気がする。弐瓶勉の描くよくわからなさと違って、田口ランディの書くよくわからなさは僕らに近い所にあるから共感を呼ぶんだろうな。世界と渋谷。とっても遠いところと、とっても近いところ。(こういってよければ)現実界想像界が媒介なしに結びついてしまっているというのが顕著にあらわれている気がする。ハチ公前から宇宙の神秘へひとっとび、だ。