「赤色のモスコミュール」(『ファウスト vol.1』所収) 佐藤友哉

 ミナミ君のキャラがどうしても舞城王太郎を意識させてくれる。僕も平凡な人間になるのが怖くて、自分が人よりも優れていると思いたくて、しかし21歳になった今平凡なまま生き続けている人間なので、この話にはとても共感できる。乱暴な言い方だけど、猫の首を斬ってでも、バスを乗っ取ってでも、特別になりたかったという思いがないといえばそれは嘘になる。平凡な大学に通い、平凡な生活を送り、自分が平凡な人間であることを意識するのは本当に苦しい。