『白い果実』ジェフリー・フォード
- 作者: ジェフリーフォード,Jeffrey Ford,山尾悠子,金原瑞人,谷垣暁美
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2004/08/01
- メディア: 単行本
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第一章では、きわめて高慢に振舞うクレイに対してアナマソビアの人間が皮肉の効いた冗談を言ったりしたりし、それに対してクレイが激怒するというやり取りが多い(あるいは気づかないこともある)。辺境に位置し、国家と魔物がすむ森の境界部分に住むアナマソビアの人間は冗談無しではやっていけない、という記述があるんだけどそれがこのアナマソビアの人間のクレイを舐めたような態度に妙なリアリティを与えていてすごく面白い。異界と向かい合って生きる彼らには、ユーモアというものが欠かせないからだ。
とかなんとか、話の本筋のことばかり書いてしまったけど、この小説の一番の魅力はその幻想性で、アナマソビアでは老人が青い結晶と化す描写があり、監獄島では昼と夜の2人の看守がそれぞれ性格のまったく異なる兄弟でさらに知能の高い猿が話を面白くする、理想形態都市ではビロウの独裁に対して革命的な雰囲気が醸造されていくさまが妖しく書かれている。細部に潜むファンタジーによって、読んでいると現実に対する認識のリアリティが弱くなってしまうような危険な小説。