とまと、いわい、しんぶんし

 

花とアリス 通常版 [DVD]

花とアリス 通常版 [DVD]

 僕は普段全然映像作品を見ないのだけど、友達が遊びに来たときに何か映像作品を見ようということになって、これを借りた。花という女の子が、宮本くんという男の子に恋をして、「あなたは私と付き合ってたのに、記憶喪失になってそれを忘れたのね」みたいな嘘を咄嗟につき、付き合い始めるというお話。ストーリーはこの荒唐無稽とも言えるスタートに加え、花が宮本くんをストーカーしていたときの証拠を宮本くん本人に見られる、それを誤魔化すためにさらに嘘を重ねる、そこで親友のアリスが関わってくる…などハプニングや、同姓間でのライバル意識の浮上など基本的に少女マンガ的要素が濃い。一方、花の片割れであるアリスは、花と宮本くんの擬似恋愛に関わりながら、芸能プロダクションに所属することとなったために、色々なオーディションを受けることになる。そのオーディションのシーンは滑稽な感じに撮られていて笑いを誘うのだけど、基本的にはアリスのやる気のなさ、のようなものが強調される。脇役が豪華でちょっとビックリ。
 最終的には花の嘘、アリスのやる気のなさという2人の幼い部分は、宮本くんを介して乗り越えられる。ストーリーの構造的に(シンプルで王道的なものだけど)とても美しいなあと思った。2人は成長したんだ。
 最初に書いたように、僕はあまり映像作品を見ない。アリスがバレエを踊るシーンが、多少長すぎるくらい挿入されるのだけど、音楽の美しさ、あとよくわからないけどきっとカメラワークの上手さとかで恐ろしく綺麗なシーンに仕上がってる。こんなシーンみたいに、ストーリー的に良く出来ているだけじゃなくて(ストーリーさえ面白ければ、と思って見ていたのが普段基本的に文字しか読まない僕のだめなとこなんだけど、よく考えれば漫画も絵で選り好みすることはあるし当たり前といえば当たり前のことを意識してなかったなと思う)、その映像が美しいからこそ、この映像作品にとても惹かれたんだなあと思う。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』をちょっと想起させられた。映像作品冒頭の、花とアリスを撮ったシーンなんかは、(以前に書いたように、何故だかよくわからないのだけど)とてもノスタルジーを喚起するもので、その感傷的で綺麗なものと(多少くすんだ感じの色なんかはその理由の1つだろうとは思う、なんでそれが理由になるのかという理由はわからない)、バレエのシーンなんかに見られる時間が止まるほどに美しいものが入れ代わり立ち代わり出てきて、映像に釘付けになってしまった。