『人喰いの民俗学 (歴史民俗学資料叢書)』 磔川全次

 『人喰いの民俗学 (歴史民俗学資料叢書)』 磔川全次 批評社
 カニバリズムに関する文献を当時の集めた本。モースが大森貝塚において、古代の日本において人肉の習慣があったという痕跡を発見し、それが当時の日本で大きな論争の種になったという紹介が導入部分でされている。自分達の祖先が食肉をしていた、というのは(僕にはわからないのだけど)納得し難いことであったみたいだ。この葛藤を解決するために、大森貝塚という痕跡を残したのは今の日本人の祖先ではなく、先住民(アイヌだとかどうとか)だったという説が唱えられるのだけど、この辺に民俗学という学問のイデオロギー性のようなものが見られる。民俗学偽史を作るんだみたいなことをよく大塚英志が言ってると思うんだけど、こういう話を聞くとその通りなんだなあと思わずにはいられない。
 ただ、こういう話を読んで最近強く思うのは、その先住民がどうこう…ってのはどっちが正しいのかさっぱり僕には判定できないということなんだ、色んなものがすごく遠くにある気がする。(以下にものすごく頭の悪い羅列の仕方をするけど)量子力学だとか、スーパーストリングスだとか、宇宙は膨張しているとかしていないとか、粒子ビーム砲だとかSETIだとか…僕にはそれが最新の物理学の成果なのか、トンデモ理論なのか、正確なところは本当にさっぱりわからない。理系じゃなくたって(上に書いたように)文系の知識だってそう。自分に出来ることといえば、誰か信頼できそうな人を見つけて、その人が紹介している本なんかを読んで、それなりの知識をつけることくらいだ。だけど、その信頼できる人が本当に信頼できるのかなんてことはまた他の誰かが信頼しているということを信頼の根拠に置くしかないわけで。
 話がそれたけど、この本の内容自体はエピソードなんかもたくさん含んでいてすごく面白い。吉川三国志の読者にはおなじみの劉安が自分の妻の肉を劉備に食べさせた話なんかも紹介されてる。今思えば、なんだけど劉封は自分の母親の肉を食べた人間を父親にしたわけか…。