ちゃんと

 冬目景イエスタデイをうたって vol.4』(集英社)
 P127のリクオの台詞「だけど…」は冬目キャラのモラトリアムぶりをもっともはっきりと表現している。4巻では湊くんがハルに告白→大学を辞める→海外へ放浪と夢に向かって一直線。対するリクオは「だけど…」なんて言ってる。極めて冬目的なこの構図は、僕たち一般人を焦らせる。湊くんは大学を辞める、リクオは大学を卒業してる。卒業しているのは辞められなかったからに過ぎない。ぼんやりと卒業して、ぼんやりとバイトをしているわけ。フクダくんの立場がすごく微妙なんだけど、卒業して、ぼんやりと就職したようなキャラを冬目がどう書きたいのかはちょっと気になる。とにかく、僕たちは湊くんとは違う。僕だって大学へ行きたいという意志が強かったわけでもなく、だから中途半端に(まあ中途半端な、かもね)大学に通っているわけだけど、そんな中途半端な大学生活を中断する勇気なんてどこにもない。当然、中断する理由もないから*1。おそらく冬目作品が好きな人にはそういう人が多いと思う、共感ってのは大事な要素だから。ただリクオの姿は共感だけじゃなくて危機感も併発させる。そして、危機感を抱きながらも何もできないのが冬目読者なんだろうとは思うけど。
 ただ、リクオくんはカメラの道へ少し真剣に一歩を踏み出したし、柚原チカだってピアノは好きって、要するに彼らには何かがある。ハルが可愛い、柚原チカが可愛い、湊くんかっこいい。うん、それはそれでいい。ただ、僕たちも少しはマンガに啓蒙されたっていいんじゃないかな?最後のページのリクオを見ればわかるように、踏み出すことはいつだって出来るんだ。*2
 柚原は可愛いんだけど、可愛いだけであまり魅力を感じないなあ。告白されると断れない、みたいなキャラ設定は『少年は荒野を目指す』の陸くんを連想させるね。あとハルのマジカルおにぎりは『ハチミツとクローバー』の山田&はぐランチですか。

*1:これは一概に理由の不在を言うことはできないかもしれない、仮にあったとしてもそこまで強い情熱を向けることができないのだ。「あー、○○いいかもー」で終わっちゃう。

*2:id:amnさん、こんなとこでどうでしょう?